2023.05.10

会社の定着率を上げるには?社内コミュニケーションの具体例も紹介

少子高齢化社会となり多くの企業が人手不足で苦しんでいます。そのため採用活動に時間とお金をかけて採用するものの定着してくれない。常に人がいない状態で、いつ業務が滞るかわからない。限られた人員でやりくりしているので負荷がかかって悪循環に陥っているなど、人材について悩みを持つ担当者や会社オーナーの方も多いのではないでしょうか。
会社の設備は導入してうまく使えば良いのですが、人はそう簡単ではありません。
本記事では、定着率と社内コミュニケーションに着目した組織運営について紹介しています。
人事担当者や組織運営に携わる方は、ぜひ記事内容をご確認ください。

定着率とは?


人事部の間で使われる定着率とは、入社後一定の期間を経て、引き続き在籍している社員の割合のことを言います。一定の期間に決まりはありませんので、各社ごとに3年、5年、10年などで区切った上で算出します。
何十年も人の入れ替わりがない会社がいい会社とは言い難いですが、1年〜3年以内に大幅に人がやめていく会社も到底良い会社とは言えません。
事業規模や事業形態にあった、程よく人の入れ替わりがある状態を目指したいところです。

定着率の計算式

定着率の一般的な計算式は以下のとおりです。
(一定の期間の経過後に勤続している人数 ÷ 一定の期間の開始時の人数)×100

新卒採用時の定着率を計算する場合は、以下のような計算式になります。
(入社人数 – 一定の期間を経た時点での離職人数)÷入社人数

離職率は定着率の反対側を意味する言葉です。定着した人たちの一方、離職した人の割合が離職率となります。定着率が60%の場合、離職率は40%ということです。

定着率や離職率を数値化すると、会社の人員の流動性をより具体的に把握することができます。

定着率が低く離職率が高い会社の実情

一般的に言われる人の出入りが多い会社の特徴を以下、7点ピックアップしました。組織の改善を考える際は、以下のポイントを一度、確認してみてはいかがでしょうか。

正当な評価がなされていない

待遇面で従業員の不満が募るケースは、給料が安いからではなく、仕事に対して正当な評価がなされていない場合です。
自分の能力に見合わないほどの高い給料を得たいというわけでなく、相対的に見てもおかしくない正当な評価をしてほしい、という不満が根底に隠れています。そのような状況で、自分の能力に見合う条件を提示してくれる会社があれば、従業員はそちらへ転職を考えるでしょう。

ダラダラと長い時間働く悪習慣がある

明らかにキャパオーバーな業務量を任されていて、残業なしでは期日までに終わらない状態が当たり前になっている会社は、ブラック企業と言われる会社の特徴の一つです。
また、今日の業務は終わっているのになんとなく帰りにくい雰囲気が蔓延している会社も悪い習慣が根付いていると言えます。用事があると言わなければ定時で帰ることができない会社は、定着率が悪いのではないでしょうか。今一度、社風にて形成された暗黙の了解を洗い出してみる作業も必要です。

休みにくい企業風土

有給休暇の申請をするために上司が納得する理由を添えなければいけない、忙しくない時期に有給休暇を申請してもとりあってもらえないなど、権利として行使できるはずの有給休暇が思うように取得できないと、従業員へストレスがたまってしまいます。
そもそも、誰かが休むと業務全体が滞る、特定の人がいないと詳しいことが分からないなど、属人化が進んでいる状態では、うまく業務が回りません。次第に、休みの人に対しても業務対応を迫るようになり、結果として定着率の低下へ繋がります。

人材を育てる環境がない

OJTと言いつつも、目先の業務だけしか教えてもらえないため、業務の全体像がつかめない、入社後すぐに一人で大量の業務を任される、という企業風土は、人が少なく、定着率が低い会社によく見られます。
定着率が低く、いつも人がいないため人材を育てる余裕がない、という実情があらわになっている状態です。志が高い従業員は、先の見通しが立たず、キャリア形成もできない会社として、早々と転職してしまうでしょう。

多様な働き方を認めない

個々の多様なライフスタイルを認めずに、全員同じ勤務形態を強制する会社は、育児や介護の責任を負う従業員への配慮が行き届いていません。多様な働き方を認める社会背景とともに、昨今では柔軟な働き方に対応する企業も増えてきました。
社会のトレンドに逆行するように、頑なに多様性を認めない業務スタイルでは、どんなに多くの人材を確保しても、定着率は低いままでしょう。選ばれる会社と選ばれない会社の差はより顕著なものとなります。

求人内容と実際の仕事内容にずれがある

人を集めるためによいところを誇張してアピールする手法は、常に人が足りない業種でよく行われます。数年後の定着率よりも、とりあえず今の状況を乗り越える必要があるため、良いことを前面に押し出して人を集めなければいけません。結果、求人内容と実際の業務の相違や待遇面が思うほどよくなかったとして、採用した人の多くはやめていきます。
そしてまた、同じ手法で人を大量に集める繰り返しです。誇大求人広告を出す会社は、定着率が低いまま会社を運営していくことを決心しているかのようにも見えます。

ハラスメントが横行している

パワハラやセクハラなどのハラスメント行為は、序列意識の強さから生まれます。階級意識が強くリテラシーが低い会社では、ハラスメントの横行は止められません。相対的に見て時代錯誤な会社に人が定着することはなく、仮に採用できたとしても、早い段階で離職してしまうでしょう。
風通しの悪い会社は、さまざまな要因が積み重なり、なるべくして定着率が悪い会社となっています。ハラスメントの横行が止まらない会社も、時代の流れとともに淘汰への道をたどることになります。

定着率を上げるための具体的な取り組み

現在定着率が悪い会社が居心地のよい組織を作るには、具体的にどのような手段を取れば良いのでしょうか。具体例を以下4点、ピックアップしました。

社内制度の見直し

社内制度の見直しとは、適正な勤務時間や休暇のとりやすさ、人事評価制度、勤務スタイル、休日、福利厚生など、組織運営の根本になる制度の改革を言います。従業員は、給料の多寡で就業先を決めているわけではありません。
根本的な制度が整っていないと給料を上げただけでは、定着率アップにつながることはないでしょう。

労働環境の整備

休暇が取りにくい、サービス残業が常態化しているなど、従業員の働きやすさに直結する労働環境が整っていない場合は、早急な対策が必要です。改善には具体性を持たせつつ現状を把握し、課題の洗い出しから具体的な対応策を考えましょう。
待遇改善は社歴に関係なく、全ての従業員に対して平等に行うことがポイントです。新入社員とベテラン社員で待遇を変えると不平不満の元となります。

教育制度の充実

入社研修に必要な業務マニュアルがない場合は、早急に作成しましょう。最低限の資料は揃えておきたいところです。
独り立ちするまで、先輩が新入社員につきっきりで教える従前の方法でも良いのですが、「メンター制度」や「1on1ミーティング」などを制度化し、フォローアップを目に見える形にする方法も効果的です。さらに踏み込んで、中堅、ベテラン社員へのマネジメント研修など、キャリア形成に関する教育までできるとなお良いです。また、ハラスメントに関する研修も行い、誰もが快適に働くことができる組織作りを目指しましょう。

人材採用への取り組みを見直す

人材採用の段階でピントがずれていると、ミスマッチが起きてしまい、会社と求職者、双方にとって良い結果となりません。
求人広告を確認する上で抑えておきたいポイントは、誇大広告になってないか、会社が伝えたいこと、軸としていることが正しく掲載されているか、仲間になってほしい人材へ届くようになっているかなどです。

誇大広告を使って、とりあえず人を集めたいという意図では、定着率の向上は望めません。定着率を上げて、会社として成長したいと考える場合、求職者へ会社側の思いを伝えることはとても重要です。

日本企業の平均的な定着率

定着率の良し悪しについては具体的な基準はありません。
日本企業の平均などを参考に相対的な判断をしましょう。

厚生労働省の雇用動向調査結果の概要や、新規学卒就職者の離職状況によると、日本の定着率の平均はおおよそ1年間85%程度で推移しています。
調査では令和3年度の離職率は、13.9%でした。新卒の離職率に関する調査結果も報告されており、3年以内の離職率は業種の他に高卒と大卒、事業規模でも異なっています。大卒で事業規模が大きな会社へ入った人ほど、離職率は低い傾向です。事業規模や業種の平均離職率をもとに、自社の状況を分析してみてはいかがでしょうか。

【参考文献】
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」
URL:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-2/dl/gaikyou.pdf
厚生労働省「令和3年新規学卒就職者の離職状況」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00005.html

社内コミュニケーションの活性化がカギ

オフィスで同僚と顔を合わせて仕事をするよりも、自宅勤務のほうが良いという声を一時期良く耳にしましたが、最近ではコミュニケーションの必要性が改めて見直されています。
生産性もさることながら、定着率においても社内コミュニケーションの必要性は十分に感じるところです。
業務中は大小さまざまなストレスがかかるものですが、周りの仲間とのつながりは、ストレスの緩衝材としての役割も果たします。
記事後半では、会社の定着率にかかせない社内コミュニケーションの活性化について、詳細を紹介します。

社内コミュニケーション活性化のメリット

社内コミュニケーション活性化によって得られるメリットを以下4点、ピックアップしました。詳細を説明します。

業務効率化

社内コミュニケーションが活性化することで、意思疎通不足による連携ミスを防ぎ、効率よく業務を進めることができます。遠隔地からのコミュニケーションが可能となった昨今ですが、コミュニケーション不足の課題は残っています。
仮にトラブルが発生したとしても、良好なコミュニケーションを維持していれば、早急な問題解決が可能です。

ナレッジ共有ができる

社内コミュニケーションが円滑に行われていると、意思疎通にかかる時間と心理的な抵抗が軽減されるため、情報共有がスムーズにできます。
社内ナレッジの共有は、従業員の根本的なモチベーションにも良い影響を与えるため、組織のレベルアップにもつながります。

新しいアイデアが出やすくなる

自由に意見交換しやすい企業風土は、活発なコミュニケーションあってのものです。リアルタイムな場所でお互いの意見が飛び交う環境から、思いもつかなかったアイデアが生まれた、という事例はよくあることです。
クリエイティブの源泉として、コミュニケーションの場は機能し続けています。

離職率の低下につながる

気軽な声掛けは双方に、心理的な安らぎを与えます。精神的な安定の他にも、仕事の相談や協力して欲しい時にも、気軽な声掛けができるため、自分で抱えた仕事のために追い込まれることは少なくなるでしょう。
精神的な安定をもたらし、安心して働くことができる環境では、必然的に離職率の低下にもつながります。

社内コミュニケーションを活発にする方法

社内コミュニケーションを円滑かつ活発にする具体的な方法を実際の現場からヒントを得て以下4点、ピックアップしました。
具体的内容を紹介します。

社員同士が自由に交流できる場の提供

物理的な風通しの良さは、自由な交流の場の基本です。風通しのよいスペースは心理的開放感も与えてくれます。なんとなく会話がしにくい、従業員の状況がわかりにくいレイアウトは早めに手を入れたほうが良いでしょう。
仕事とは全く関係のない雑談エリアを設けることによって、社員同士の心の距離が近くなり、業務上のコミュニケーションがうまくいくケースもあります。

他の部署との接点を持つ

大きな組織では、同じ会社でありながら他の部署との接点が全く無いため、どんな人が働いているのか知ることができないケースがあります。部署を超えたスムーズな連携が必要な時に、円滑なコミュニケーションは大いにメリットとなるでしょう。

協力を必要とする新しい挑戦を推奨する

制度設計や新部署、プロジェクトの立ち上げなど、新しい試みは組織の新陳代謝には欠かせません。新しい動きができると、新たなチームととりまく連携が形成され、コミュニケーションの幅はより大きく広がりを見せます。
協力してくれるチームメンバーを巻き込みつつ、大きな動きとなればコミュニケーションはより活性化するでしょう。

社外の取り組みを参考にする

社外のセミナーや意見交換会などに出席して、他社の事例を参考にする方法も有効です。オフィスのレイアウトや、従業員とのコミュニケーションのとり方は、会社や業種によって様々です。
良い点は参考にして、真似できるポイントがあれば積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

風通しの良い組織をつくるための具体的なアイデア

フリーアドレスに対応したレイアウト

フリーアドレスとは、自分の固定席を持たずにノートパソコンなどを使って、自分の好きな席で仕事をするスタイルです。
フリーアドレスにて、毎日席を変えることで社内のいろいろな人と話をする機会が増え、コミュニケーションの活性化に繋がります。

すぐに利用できるミーティングスペース

オフィスの一角に簡易的なミーティングスペースを設けることで、気軽な打ち合わせができるようになり、コミュニケーションの機会が増えます。
わざわざ会議室を予約するほどの打ち合わせでない時に、簡易的なミーティングスペースは大いに役立つでしょう。

休憩場所の設置

休憩所では、仕事と関係のない雑談ができるため、従業員同士のコミュニケーションスペースとして最適です。さまざまな部署の人と顔をあわせることになり、コミュニケーションの幅は広がります。気軽な雑談は適度なリラックスとなり、仕事の生産性をより高めてくれるでしょう。

まとめ

定着率は社内の状況を表す指標の一つです。定着率が高く、人の流動性が悪すぎる会社の状況は良いといえませんが、1年〜3年の間に多くの従業員が入れ替わるような会社は、今後訪れる少子高齢化、働き手不足の社会にて存続していくのは難しいでしょう。定着率が悪く離職率が高い会社は、多くの場合、社内の制度に問題があり、コミュニケーションが不足しているケースがほとんどです。
社内の状況を変えたい場合は、従業員が健やかに労働できているか、必要なコミュニケーションは確保できているか、という点を検証してみてはいかがでしょうか。

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