ビジネス用語「OJT」
ビジネス用語をより詳しく、より仕事に活用できるように紹介しています。
今回のテーマは「OJT」
OJTは「On the Job Training」の略称で、職場での実践を通じて業務知識を身につける育成手法のこと。
「職場内訓練」と訳されています。
第1次世界大戦時のアメリカで誕生したと説明されています。
この変化の激しい中、新たな仕事に挑戦をする方も多いと思いますが、まずはその業務に必要な知識を覚えたり、操作方法を覚えることからスタートします。
その覚えるために仕事を通して学ぶ方法が「OJT」です。
一方で職場外でセミナーや講演会、見学会などで学ぶ方法はOFF-JT「Off the Job Training」と呼ばれています。
この二つの方法はどちらがいいとかどちらが悪いというものではなく、両者にメリット、デメリットがあるために効果的に活用することが求められます。
OJTを受けるときの心構え
OJTを実施する上司の指導スキルや準備なども大事ですが、教育を受ける立場の意識や行動が効果性を大きく左右することがあります。
Point 1. その業務の目的を考える
この業務が『どのような目的を持っているのか』を明確にすることが大切です。
この仕事は誰の役に立つのか、どんな効果があるのかなど考えることによって、習得スピードも仕事の意識も有意義性も高めていくことができます。
目的を自ら考えている人と何も考えないで受け身の人では、手にする成果や成長が変わります。
Point 2. 基礎をしっかり身につける
基礎の上に基本があり、基本の上に応用があります。
基礎がしっかりしていないと、建物と同じで高く高く応用を積み上げると、建物の延ばしていくとふらついてしまいます。
しっかりと基礎を学ぶことが大切です。
Point 3. 積極的に学ぶ
そして、もう一つ大切なことは「積極的に学ぶ」ということです。
なぜ積極的に学ぶのかというと、自分自身が早く成長して貢献できるようになることが、仕事のやりがいや面白さ、お給料アップにもつながることだからです。
では、積極的に学ぶとは具体的にどのようなことでしょうか?
一つはわからないところは自ら質問をして確認をするという事です。
上司や先輩はあなたがどれだけわかっているのかを、あなたが伝えるまではわかりません。わからないことがダメではなく、わからないことをそのままにして失敗してしまうことが問題です。
二つ目は復習をするという事です。
人間の記憶は1時間後には56%忘れるといわれています。人間の性質上忘れて当然ですが、先週教えたことを忘れてわかりません、では社会人としてどうでしょうか?
そうならないためにも復習をしておくことはとても役に立ちます。
また復習をするから、改めてその業務を見たときにわからないことがでてきたり、忘れてしまったりしている部分があるかもしれません。
上司や先輩もいざ実践の時に忘れませんといわれるのと、復習をしていてわからないところがあるので教えてくださいと言われるのでは大違いです。
後者は積極的である、熱心であるというイメージも持ってもらえます。
新しいことにチャレンジする、成長をしようという人には共通して必要のことです。
リスキリングが必要といわれている時代において、OJTを受けるとき、教わるときに気をつけて、たくさんの成果が出るようにしましょう。
OJTがうまくいかない6つの理由
OJTを行ってはいるが、なかなか思うように育ってくれない。指導の仕方が良くわからない。場当たり的になっている。といったお困りごとをよくお聞きします。
「企業は人なり」というように、会社は人で成り立っています。人の成長が企業の成長に直結するわけですが、社内のOJTが上手くいかないことで生産性を妨げ、モチベーションやエンゲージメントの低下につながってしまうこともあります。
1.上司が固定観念を持っている
上司の否定的な固定観念により、部下の可能性や能力を引き出せていなかったり、事業の拡大を閉ざしていることがあります。
「〇〇にはまだできない」と決めつけて新しい仕事にチャレンジさせていなければ、いつまでたっても部下は成長しません。それは、個人と会社の成長の機会を奪っていることになります。
2.迅速性の欠如
仕事のスピードが遅いために、時間あたりの生産性が上がらないということがあります。作業スピードもありますが、とりかかるまでの初動の遅さ、歩くスピード、スキマ時間などです。
心理的な面では、周りの目を気にして躊躇する時間、失敗を恐れて考える時間、問題意識の欠如、そうした積み重ねが生産性を下げていることがあります。
3.指導技術の不足
組織はトップの器以上にならないと言われるように、指導する人の指導力不足によって成長を妨げていることがあります。
もちろん経営者も上司も完ぺきではありません。得手不得手、課題があって当然です。それを謙虚に受け止め学び続けるとともに、課題を補うための仕組みを会社が用意しておくと良いでしょう。
4.学習意欲が低い
習熟度不足の人ほど学習意欲が欠如しています。ある調査では、7割弱の社会人が学ぶ習慣をもっていないとの現実が明らかになりました。一方、リカレント教育が注目されており、実際に「学び直し」を行った人の8割以上が仕事に良い影響があったと答えています。個人の意欲に任せっぱなしにせず、組織として学ぶ習慣を仕組化することも大切です。
5.業務や作業のブラックボックスがある
仕事はどんどん進化しているのに、業務の流れは全く変わらず、やることだけ増えている企業が多々あります。ボトルネックが多く存在し、その原因が発見できず改革に至らない。また、現場に任せっきりにしていてノーチェック。いつの間にかそうした悪習が慣例化してしまっていることがあります。
定期的に業務を見直し、目的を再確認しましょう。
6.組織のコミュニケーション不足
コロナ禍や働き方改革の影響でリモートワークが推進されたりして、組織コミュニケーションに課題と考える企業が増えています。
組織コミュニケーションは、共通の目的を達成するために行う意志疎通です。それが企業の意思決定のスピード感を高め、情報共有や組織を健全に保つことにつながるのです。
さて、いかがでしたでしょうか? 思い当たる点はございましたか?
OJTを効果的に進めていくためには、自分自身や会社の仕組みを客観的に見つめることが大切です。うまくいかないことを他人のせいにするのではなく、自分が今できることに意識を向けて、より以上を目指していきましょう。
また、社内だけではなかなか客観的になれないことも、OFF-JT(職場外教育)を含めることで、常に新しい情報が収集できたり、他流試合によるスキルアップを行ったりすることもできます。
2022年中小企業白書に「中小企業の経営力及び組織に関する調査」(帝国データバンク・2021年12月)が掲載されています。その中で、人材育成の実施状況と売上増加率の相関関係についての調査結果がでています。2015年と2020年の売上を比べたときに人材育成を行ってる企業と行っていない企業では、売り上げにどれだけ変化があるのかという調査です。
実にOJTが場当たり的(あるいは全く行っていない)かつOFF-JTの実施もしていない企業に比べて、計画的なOJTとOFF-JTとを組み合わせて実施している企業とでは、3倍もの違いが出ています。
OJTとOFF-JTは組み合わせることによって、大きな効果を出すことができます。OJTは教育システムの基本ですが、様々な学び方を取り入れ、体系的にバランスよく教育を行っていきましょう。