人材育成における目標設定の具体例を職種・階層別に紹介!設定方法や管理のポイントも解説
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企業や団体等の組織が人材育成を成功させるには、適切に目標設定をすることが重要になってきます。
その理由としては、数年単位の時間をかけて人材育成施策の策定・実行・振り返りをする中で進むべき方向性を見失わないようにするため、また従業員本人に個別の目標設定と管理に取り組んでもらうことにより、主体性や自己効力感を育てるためなどが挙げられるでしょう。
そこで今回は、全国に14,000社以上の会員企業様を抱え、多様な中小企業の人材育成を幅広くサポートしてきた日創研が、人材育成における目標設定の具体例を職種別・階層別に紹介していきます。
併せて、目標設定の手順と重要性、管理のコツについても解説していくので、自社の人材育成において目標設定がうまくいかず、お悩みの経営者の方は、ぜひ参考としてご覧ください。
目次
人材育成における目標設定のやり方・手順を紹介
まずは、人材育成を進める上で組織と個人双方の指針となる目標を設定する方法について確認していきましょう。人材育成における目標設定の大まかな手順は、以下の通りです。
- 経営理念や経営ビジョンをもとに、自社が求める人物像(=人事理念)を明確化する
- 職種や階層、役割ごとに、社員に獲得してほしいスキルや知識、資格等を具体化する
- 求める人物像と現状のギャップから、人材育成に必要な施策や学習内容を洗い出す
- 解決を目指すべき問題や課題、求める人物像から組織全体の人材育成目標を設定する
- 組織全体の目標をチームや個人に落とし込むかたちで、チームリーダーまたは個人が、それぞれ主体的に目標設定を行う
人材育成の目標は、組織全体としてだけでなく、チームや部署・部門単位、また一人ひとりの社員といった個人レベルで、それぞれ設定しなければなりません。なお社内の小単位の組織、個人の人材育成目標は、各々の役割や行動特性、キャリア志向等を踏まえて異なる内容にして構いませんが、目標のベクトルについては、組織全体の目標と一致させる必要があります。
人材育成の主な目的は、個人の成長を通して組織全体を成長・発展させること、そして社員が人として成長することの幸せや、仕事のやりがいを得るサポートをすることです。
特に中小企業においては、個人やチームの目標達成・成長が、そのまま組織全体の目標の達成と発展につながるサイクルを生み出すことができるかどうかも重要になってきますので、目標設定の手順と併せて覚えておきましょう。
人材育成上の目標設定と管理をする際のコツ・注意点は?
ここからは、人材育成に関する個別目標を適切に設定・管理するためのポイントを3つに絞って説明していきます。いずれも、個々の社員が自身の役割や特性に合った目標を設定し、上司や管理職とともに達成を目指していく上でのヒントとなりますので、ひと通りご確認ください。
個別目標は、必ず社員本人に主体性を持って設定してもらう
一人ひとりの社員に自身の個別目標を設定してもらい、その達成に向けて、上司とともに進捗管理していく一連のプロセスには、以下のようなスキルや意識を育てる効果が期待できます。
- 自身に求められる役割を自覚し、自分で考え、責任を持って行動するための主体性
- その時の目的や目標に合わせて自ら計画を立て、具体的な行動を起こすための自律性
- 「自分ならうまくできる」という自信、仕事のモチベーションにつながる自己効力感
- 組織の一員として働く自覚、企業への帰属意識や結びつきであるエンゲージメント
日々の業務に直結する知識・技術を教える、獲得してもらうことだけが、人材育成ではありません。主体性や自律性など、組織の一員として働く上で必要なスキルを育むことも大切な人材育成の一環ですので、人材を育成していくための個人目標は、必ず社員さん本人に設定してもらうようにしてください。
長期的な目標から逆算して、短期的な目標も設定しておく
目標は、達成までの期間設定により、中長期的な目標と短期的な目標の2種類に大別できます。
長い時間をかけて進めていく人材育成において、中長期的な目標とは、今後3〜5年の間に達成を目指す最終的なゴールのこと。対して短期的な目標とは、中長期的な目標を達成するために半年〜1年以内の達成を目指すべきスモールゴールのようなものと理解すれば良いでしょう。
中長期的な目標と短期的な目標には、それぞれメリット・デメリットがあります。そのため、人材育成上の個別目標は、中長期的・短期的な目標の両方を設定することをおすすめします。
具体的には、まず組織全体の人材育成目標と個人的なビジョン(将来叶えたいキャリア、仕事で達成したいこと等)をもとに中長期的な目標を考え、そこから逆算して段階的に達成すべき事柄となる短期的な業績目標、行動目標を考えていくと目標設定がしやすくなるでしょう。
なお、自身のビジョンやキャリア志向、強みを分析するのが難しい場合は、目標管理シートや日創研の個別目標実現シート(ビジョンシート)等のツールを活用して、個別目標を設定するのに必要な情報を言語化・具体化してみると良いかもしれません。
目標管理シートや個別目標実現シートがどのようなものか知りたい、活用を検討したいという方は、以下の記事も併せてご確認くださいね。
【関連記事】【職種別例文あり】目標管理シートの書き方を解説!人材育成に活かすためのポイントとは
管理がしやすいように、数値や期日を入れて目標設定する
目標の達成度合いや進捗は、明確かつ客観的な基準がないと管理・評価するのが難しいと考えられます。そこでおすすめしたいのが、定性的ではなく定量的な目標を設定することです。
- 定性的な目標とは:達成基準を数値化しにくく、達成度合いを判断しにくい目標
- 定量的な目標とは:達成基準を数値化しており、進捗を客観的に評価できる目標
人材育成上の個別目標は、できる限り具体的な数値を盛り込んで定量化するか、定性的な目標と定量的な目標の両方を設定するようにすれば、進捗管理や評価がしやすくなるでしょう。
【職種別】人材育成のための目標設定の具体例
ここからは、職種別・階層別の順に人材育成における目標設定の具体例を見ていきましょう。
まずは代表的な職種である営業職、事務職、技術職、サービス職の4つの職種の目標設定の例を紹介していきますので、自社の業種や、これから人材の育成に注力していきたいと考えている職種等を考慮しながら、確認してみてください。
【営業職の場合】人材育成のための目標設定の例
部署やチームの目標として、売上等の数値が設定されていることが多い営業職では、個別目標も比較的設定しやすいと考えられます。以下の例を参考に組織全体、またチームとしての目標を達成するためにいつ、どのように行動し、成果を出す必要があるのかを考えてみましょう。
- 5年後の会社の売上目標達成のため、3年以内に月の個人売上額を1,000万円超にする
- 語学やノウハウ系の資格を1つ以上取得し、対応できる顧客と商材の幅を広げる
- 半年でPDCAサイクルと業務効率の改善を行い、今年度中に利益率を〇%向上させる
- 3か月以内に新規訪問数を現在の〇倍にし、半年以内に新規顧客の獲得数を△倍にする
- コミュニケーション能力とマネジメント能力を磨いて、チームリーダーに昇格する
【事務職の場合】人材育成のための目標設定の例
電話や来客への対応、書類整理、他部署のサポート等を行う事務職は、営業職に比べると目標の数値化が難しいですが、視点を変えて各項目を見直していくと定性的な目標を定量化できる場合があります。
組織での自身の役割や将来的なビジョンを意識しながら、目標設定をしてみましょう。
- 3か月で業務フローとマニュアルの改善を行い、半年以内に月のミス発生件数を0にする
- 関連資格を1つ以上取得して知識を深め、他のメンバーをフォローできる人材になる
- 5年後の会社目標達成のため、3年で既存社員のスキルアップと残業時間削減を実現する
- 1年で業務効率を改善し、OFF-JT等で継続的に学習する時間を確保できる環境を整える
- 営業をはじめとする他部署との連携を強化し、頼ってもらえる人材・チームになる
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【技術職の場合】人材育成のための目標設定の例
技術職の業務範囲は、設計や製造、開発、修理など多岐にわたりますが、いずれも数値目標を立てやすいと考えられます。以下の目標設定例を参考に、自身の目標を考えてみてください。
- 道具の配置等を見直すことにより、半年以内に1件当たりの作業時間を10分削減する
- 今把握している問題・課題の解決や改善に有効な新システム等を、1年以内に導入する
- 営業部との連携を強化し、営業担当者からもお客様からも頼られる技術者を目指す
- マニュアルの作成や業務フロー見直しにより、不良率やエラー率を〇%以上低減する
- OJTに積極的に取り組み、新入社員を含む全メンバーの大幅なスキルアップを達成する
【サービス職の場合】人材育成のための目標設定の例
店舗での販売の他、ホテルや飲食店等での接客を主な業務とするサービス職の成果や目標には、売上や利益率、リピート率といった数値化しやすいものもあれば、お客様満足度など改めて調査しなければ客観的な評価・判断が難しいものもあります。
可能な限り定量化することを意識しつつ、以下のようなイメージで目標設定してみましょう。
- 今年度中に個人売上額を前年比で〇%、顧客単価率を△%上げる
- 3年以内に店舗全体の売上を〇%、店舗のリピート率を△%向上させる
- まずはお客様に顔と名前を覚えてもらい、常連客から声をかけてもらえるようになる
- 1年で誰よりも自社の商材、サービス、お客様の魅力を理解する人材になる
- 社内外向けに開かれるイベントや研修、セミナー等の運営を任せてもらえるようになる
【階層別】人材育成のための目標設定の具体例
日創研では、企業組織の階層を社長・管理職を含む幹部・現場の社員の3つに分けて考え、それぞれが自身に求められる役割に応じて能力を発揮する三位一体の経営ができる状態を目指して人材育成を進めていくことをおすすめしています。
そこで以下に、現場の社員と管理職については人材育成の目標設定例を、社長については成長・学習に関する目標設定例をそれぞれ紹介していきます。人材育成の際には、階層ごとに目標設定や育成計画を立てることも重要になってきますので、ぜひ参考にご覧ください。
【現場の社員】人材育成に関する目標設定の例
- 先輩に指導、フォローされる立場を脱し、安心して仕事を任せてもらえるようになる
- 今年度1年間は、ロールプレイングやプレゼンテーションの練習等、後輩の支援をする
- 3年で社内、または社外に向けて行われる勉強会の責任者や講師役を担えるようになる
- 組織の一員として十分なスキルを身に着け、お客様と社会に貢献できる人材になる
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【管理職】人材育成に関する目標設定の例
- 週に1回などの短いスパンで、定期的に部下との面談を行う
- 部下から提出される業務日報に対し、毎日の返信を徹底する
- 今年度1年間は、部下に向けた定期的な勉強会を主催する
- 今後3年間で、経営知識習得のための研修に参加し修了する
【社長】成長・学習に関する目標設定の例
- 月に1回など定期的な幹部社員との面談を、継続的に実施する
- 自己成長のため、毎年必ず1つ以上の経営セミナーに参加する
- 経営理念の内容や重要性を周知するための勉強会を毎年行う
- 継続的に地域活動に参加し、役員や世話役を積極的に担う
職種別・階層別の例を参考に人材育成の目標設定をしてみよう
組織全体としては「経営理念と人事理念に沿ったもの」、チームまたは個人単位では「全体目標と方向性が合致しているもの」であれば、どのような目標設定も間違いではありません。
ここまでに紹介してきた職種別・階層別の例を参考に適切な目標設定を行い、実際に達成に向けて動き出した後は定期的な進捗確認とフィードバックを実施して、管理していきましょう。
なお、社員さんによる個別の目標設定がなかなか進まない場合は、自身のキャリアやスキル、強みと弱み、考え方の癖などについて、改めて分析する機会を与えると良いかもしれません。
日創研では、一人ひとりのスタッフに気づきを促し自己認識をアップデートさせるためのセミナーとして「SA(セルフ・アウェアネス)自己成長コース」を定期的に開催しております。
自社の人材育成、またそのための目標設定に取り組む中で、社員の仕事への意識や思考方法を変えてもらう必要性を感じているという経営者の方は、ぜひ日創研の「SA自己成長コース」の受講をご検討の上、お気軽にご相談ください。
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