人材育成をする人に求められるスキルを解説|育成の成功に必要なこととは?
企業にとって最も重要な経営資源の一つである「人」を育て、永続的に成長・発展できる組織になるためには、自社の人事理念に沿って人を育てられる人材の確保も必要になってきます。
では組織の人材育成を行う人材には、具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。
そこで今回は、全国に14,000社以上の会員企業様を抱え、多様な中小企業の経営、人材育成を支援してきた日創研が、人材育成をする上で必要な10のスキルについて解説していきます。
併せて、人材育成に関わるスキルの向上、ならびに育成を成功させるために必要なことも紹介していくので、自社の人材育成を担う社員を育てることにお悩みの経営者の方や人事担当者は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
育成担当者に求められる「人材育成の必須スキル」10選
新入社員や若手社員、または自身の部下に対して人材育成を行う際には、通常業務を行う時とは異なるスキル、知識が必要になります。そこでここからは、人材育成を行う立場となった上司や管理職、現場の社員に求められる10種類のスキルの概要について確認していきましょう。
【その1】人材育成上の問題、課題を把握するスキル
人材育成に注力することにより、自社が今抱えている経営上・人材育成上の課題の解決を目指したいと考える企業は少なくありません。
そのため人材育成に関する施策を検討・実行する立場の人には、自社の現在の状況を客観的に分析・理解し、解決を目指すべき人材育成上の問題や課題を正しく把握するスキルが求められます。具体的には観察力や洞察力の他、会社に関する知識、また従業員からヒアリングを行うためのコミュニケーションスキルなどが必要になるでしょう。
【その2】必要な教育プランを設計・提案するスキル
人材育成の担当者は、会社が定めた人事理念や人材育成方針に沿って具体的な計画を設計し、自社または各部署に必要な教育プランを人事部や経営陣に提案する役割も担っています。
人材育成を行うには、自社の人材育成における現状把握をするための能力だけでなく、それらを解決するための具体的な計画、施策を考え、実行するためのスキルも必要になるのです。
【その3】人材育成のための環境や制度を構築するスキル
企業組織が中長期的に人材育成に注力するには、以下のような仕組みづくりも欠かせません。
- 人材育成に関する施策の策定、実行、改善を継続的に行える環境や社風づくり
- 会社が設定した人材育成の方向性、教育施策と連動した人事体制と人事評価制度の構築
- 学習できる時間を増やすために、属人化している業務をマニュアル化・効率化する
- 全社員に学習機会を提供し、組織にとっての人材育成の必要性・重要性を広く周知する
- 学習方法について幅広くリサーチし、自社の現状と課題に合う手法を検討する など
人材育成を主導する立場の人には、既存の人事体制や人事評価制度、採用フロー等を見直し、自社が求める人材を育てていくための仕組みを構築するスキルも必要になるでしょう。
【その4】ロジカルシンキング
ここまでに見てきた人材育成上の課題の把握、計画の立案、仕組みづくりをしていく上で役立つスキルが、ロジカルシンキングです。ロジカルシンキングとは、原因・結果・課題という風に情報を構造的に整理していく思考方法のことで、別名「論理的思考」とも呼ばれています。
後述するコミュニケーションスキルと並び、代表的なビジネススキルの一つとされているもので、取得した情報についてわかりやすく他者に説明したい場合や情報を利活用する方法を考える場合に役立ちます。
【その5】コミュニケーションスキル
人材育成に関わる業務の大半は、社内外の関係各所との調整、話し合いで成り立っています。
そのため人材育成には、高いコミュニケーションスキルも不可欠です。特に、相手の感情や意図を正確に汲み取り、共感した上で、こちらの伝えたいこと・教えるべきことをわかりやすく伝えるためのコミュニケーションスキルは、人材育成の現場で必須の能力と言えるでしょう。
【その6】マネジメントスキル
日創研では、マネジメントスキルを「組織でPDCAサイクルを回し経営数値を達成する能力」と定義しています。個人ではなく複数人で組織されたチーム単位でPDCAサイクルを回して、会社が設定した数値目標を達成していくには、人材育成を含む以下の3つの要素が欠かせません。
指導力や目標の設計力、実現力を持った人物がリーダーシップを発揮すること
目標達成や課題解決のため、メンバーを適材適所に割り当てて組織力を強化すること
メンバーと適切にコミュニケーションを取り、育成や指導能力の開発に当たること
人材育成もマネジメントの一環ですから、チームリーダーや管理職の経験で培ったマネジメントスキルも、人材育成に大いに役立つと考えてよいでしょう。
【その7】フォロワーシップ
フォロワーとは、社長や上司等のリーダーのもとで業務を遂行する一人ひとりの社員のこと。
そしてフォロワーシップとは、簡単に言うと「組織のリーダーから指示を受けた社員が主体的に考え、行動すること」を意味する言葉です。なお日創研では、フォロワーシップという言葉をより具体的に定義しており、フォロワーが以下のような考え・価値観を持って自ら主体的に考え、行動し、リーダーやチームメンバーと協力しながら結果を創ることと考えています。
エンゲージメント(帰属意識)が高く、絶えず自身の経営感覚を磨こうとする
上司の指示を自主的に受け入れ、目標を達成するために考え、誠実に業務に当たる
上司の判断や指示に問題・間違いがあれば、必要に応じ冷静に指摘できる力を持つ
人材育成を行う担当者も、社長をはじめとする経営陣や直属の上司からの指示を受けて業務に当たっていることが多いです。そのため会社の方針や上司の指示を受け入れた上で自ら考え、目標達成に向けて動くフォロワーシップも育成担当者に必要なスキルの一つだと言えます。
【その8】コーチングスキル
コーチングスキルとは、教えたい知識・スキル等を直接伝えるのではなく、対話と質問を通して育成対象者が自発的に学びや気づきを得たり、考えること・学ぶことへの動機付けや課題解決することを促していくための会話術です。
対象者の主体性・自主性を尊重する代表的な人材育成手法の一つであり、特に部下や後輩との1on1での面談に役立つスキルなので、身に着けておいて損はないでしょう。
コーチング型朝礼に活用できる「13の徳目」の内容や人材育成におけるメリットとは?
【その9】ティーチングスキル
ティーチングとは、育成担当者が持つ知識や経験したこと等、業務上必要な情報について育成対象者に教えることです。教える内容の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 基本的なビジネスマナー
- 自社が属する業界の特性、慣例、商習慣、現状
- 会社全体の成り立ち、仕組み、部署による役割の違い
- 育成対象者が所属する部署で必要なスキル、専門知識
- 自身の経験や自社のお客様と接する中で得たノウハウ など
ティーチングスキルは、基本的に育成担当者から育成対象者へ一方的に情報を伝える、教えるためのスキルであるため、対話と質問で気づきを促すコーチングとは根本的に異なります。
どちらも人材育成を行う上で非常に役立つスキルですが、混同しないように注意しましょう。
【その10】業務上必要な専門知識、技術
実務を通して業務に必要な知識・スキルについて教えるOJTを行う場合は、育成対象者の上司や先輩、管理職が育成担当者となり、直接人材の教育に当たる可能性が高いと考えられます。
そのため人材育成を行う際には、ここまでに見てきたような指導者・管理職としてのスキルの他に、現場の社員としての知識や経験、高い技術力も必要になると理解しておきましょう。
人材育成に必要なスキルは、育成対象者の階層により変わる
企業や団体等の組織では、役職や階層により求められる役割、能力、責任が変わってきます。
そのため育成担当者は、育成対象者の役職・階層ごとの求める人物像、設定した育成目標やゴールの違いに合わせ、スキルを使い分けながら人材育成を進めていかなければなりません。
例えば日創研では、企業組織の階層を社長・管理職・現場の社員の3つに分け、それぞれが求められる役割に合わせて以下のスキルをバランスよく身に着けられるように、人材育成を進めていく必要があると考えています。
コンセプチュアルスキル | ・特に経営者に必要な戦略的思考能力 ・長期的視野、大局的な視点のもとで経営目標を設定し、計画を立てるためのスキル |
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ヒューマンスキル | ・すべての組織人に必要な対人関係能力 ・社内外の関係者と良好な関係を築き、協力的な組織風土を創るのに不可欠なスキル |
テクニカルスキル | ・主に現場の社員に必要な業務遂行能力 ・業務上必要な専門性の高い知識や技術、また設備や機器等の操作スキルを指す |
日創研が目指す「三位一体の経営」実現するための階層別教育カリキュラムの詳細とは?
人材育成の際には、いずれの階層においてもコンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル、テクニカルスキルの各分野について過不足なく学習機会を提供する必要があります。しかし上記の一覧表にもまとめた通り、重点的に学ぶべきスキルや求められるスキルバランスは育成対象の役職と階層により異なるため、育成担当者が取るべき施策や接し方も変わってくるのです。
相手の階層を基準とした人材育成スキルや手法の使い分けは、育成を成功させるための重要なポイントの一つです。人材育成をする際に必要なスキルと併せて、ぜひ覚えておきましょう。
育成スキルを向上させ、人材育成を成功させるポイント
最後に、企業の人材育成を成功させるためのポイントや必要なこと、また人材育成を担える人材を育てるためのヒントについて、4つに絞って紹介していきます。
中長期的な視点で計画的に人材育成を進める
人材育成による成果を実感できるようになるには、5年〜10年単位の長い時間が必要です。
そのため人材育成は、中長期的かつ戦略的な視点で目標や方針を定め、計画を立てた上で施策の策定、効果測定、改善を繰り返しながら継続的に取り組んでいかなければなりません。
これから人材育成を進めていくなら、成果を急がず、長期的に取り組んでこそ人材と組織両方の成長を実感できるようになると理解しておきましょう。
さまざまな育成手法の活用を検討してみる
人材育成の手法としては、実務を通して専門的な知識や技術を教える「OJT」と、通常業務から離れて社内外で開催される講習会や研修会、セミナーに参加して学ぶ「OFF-JT」が有名です。
しかし近年では、さまざまな育成手法が登場しているため、OJT・OFF-JT以外の以下のような方法を組み合わせて効率的に人材育成を進めていくこともできます。
- インターネット上に用意されたコンテンツを活用して学習する「e-ラーニング」
- コーチングの導入により、毎朝の朝礼を学びの時間に変える「コーチング型朝礼」など
人材育成を成功させたいなら、固定概念にとらわれず、幅広い育成手法・学習方法の活用を検討してみてくださいね。
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必要に応じて社員への価値観教育も実施する
育成対象者の仕事や学びへのモチベーション、向上心が低ければ、せっかく学習機会があっても学んだことが定着しません。そのような場合は、直接的に業務に関わる知識やスキルよりも先に、組織の一員として働くことや仕事への価値観について学ぶ必要があると考えられます。
人材育成を行う際は、必要に応じて「価値観教育」も実施すると良いと覚えておきましょう。
企業組織で働く人の仕事・学びへの価値観を変える!日創研の「可能思考セミナー」について
経営陣と管理職から人材育成への意識を改革する
人材育成を成功させるには、育成対象者だけでなく育成担当者が学ぶことも非常に重要です。
人材育成を主導し、社員さん達に教育する立場となる経営陣や管理職こそ、人材育成の意義や手法について積極的に学ばなければなりません。これから人材育成に注力していきたいと考えているなら、人材育成を行う担当者全員で同じカリキュラムを受け、共通の学習体験と認識のもとで育成に取り組むことをおすすめします。
人材育成の成功には、育成担当者側のスキルアップも不可欠
人材育成を行う人には、問題や課題を発見・把握した上で解決に向けた具体的な施策を考えたり、育成対象者を尊重しつつ、うまく成長へと導くためのさまざまなスキルが求められます。
またそれらのスキルを、育成対象者の階層や役職によって使い分ける能力も必要になるため、人材育成の成功には育成担当者側の学習と成長、スキルアップが不可欠だと言えるでしょう。
なお日創研では「人材育成ワンポイントセミナー」と題して、上司・部下・組織の各側面から経営資源の中で最も重要な要素の一つである人を育成するための仕組み、ポイントについて学んでいただけるセミナーを開催しております。
組織の人材育成を成功させるための基本的な考え方を知りたいという方や、経営陣と管理職で人材育成について学び直し、知識やスキルを高めたいとお考えの経営者の方は、ぜひ日創研の「人材育成ワンポイントセミナー」の受講をご検討の上、お気軽にご相談ください。