人材育成において目標は重要?設定方法や具体例をはじめ数値化・達成のポイントも紹介
目標とは、最終的な目的を果たすために達成すべき具体的な事柄やゴール、指標のことです。
人材育成においても、自社の状況や経営方針、将来的なビジョン・ミッションをもとに導き出した求める人物像をベースに目標を設定し、達成を目指していくことが推奨されています。
そこで今回は、全国に14,000社以上もの会員企業様を抱え、さまざまな中小企業様の人材育成をサポートしてきた日創研が、人材育成において目標設定が必要な理由や大まかな設定手順、具体例、また人材育成目標を達成するためのポイント等について、まとめて解説します。
戦略的に人材育成を進めたいと考えているものの、具体的にどのような手順・内容で目標を立てるべきなのか分からない等のお悩みを抱えている経営者の方は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
人材育成の現場で目標設定が必要な理由は?
まず、人材育成の際に目標を設定する意味や必要性としては、大きく以下の3点が挙げられるでしょう。
人材育成の方向性を見失わないようにするため
人材育成により、実現を目指すべき経営方針や理念、ビジョン、ミッションは企業によって異なります。また人事体制や人事評価制度、教育機会・内容の見直しといった人材育成に関わる施策の効果、成果を実感できるようになるには、5年〜10年単位の長い期間が必要です。
そのため、あらかじめ自社が理想とする組織としての姿や、そのために必要な人物像を明らかにした上で人材育成を進めないと、自社に合った教育の内容や方法の判断がつかなくなる他、施策に根拠や一貫性が見えなくなるため育成対象者を混乱させてしまう恐れがあります。
自社における人材育成の方向性や最終的に達成を目指すべき目的、またそこに至るまでの進捗確認やフィードバック、改善を適切に行うためにも、具体的な目標設定は不可欠だと言えるでしょう。
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全社活動として人材育成に取り組むため
人材育成を通して組織全体を活性化させるには、一部の役職や部署の人材だけでなく、すべての階層や社歴、役職の従業員に対し、それぞれの役割や行動特性に合わせた人材育成施策を提供しなければなりません。そしてそのためには、経営者が強い意志を持って方針や目標、目的を明確に提示し、全社員とともにトップダウンで人材育成に取り組む必要があるのです。
人材育成における目標の設定は、一人ひとりのスタッフに会社の経営理念や人事理念、人材育成に関する方針等を広く知らせ、理解を促進するという意味でも、必要だと言えるでしょう。
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自己効力感の高い自律型人材を育成するため
人は、目標に向かって努力することや目標を達成することにより、「自分なら目標を達成できる」「うまく進められる」という自己効力感や自信、やりがいを感じられるようになります。
これは、仕事においても同様です。会社が提示した人材育成上の目標をもとに自ら個人目標を設定し、達成に向かって取り組むことは、働きがいを感じやすくなる他、仕事の意味への理解や組織に貢献しているという実感を深め、モチベーションを高めることにもつながります。
人材育成を行う上では、自身のキャリアや組織全体の成長、目標達成について考え、主体的に行動できる自律型の人材を育てることも大切になってきます。そういった観点からも、組織と個人のそれぞれに明確な目標を設定しておくことは重要だと考えられるでしょう。
人材育成の目標を設定するための大まかな手順
人材育成における目標設定の重要性や意味が理解できたところで、ここからは、人材育成目標の立て方について具体的に説明していきます。日創研主催の研修プログラムで実際にご紹介している目標設定のプロセスも踏まえた内容となっていますので、ぜひ参考にご覧ください。
ステップ①自社にとって必要な人物像を明確にする
まずは人材育成方針に基づき、人事理念と自社にとって必要な人物像を明確にしていきます。
なおこの時、キャリアや職種別に求める人物像を明確にしておくことが大切です。階層や役職、社歴、行動特性ごとに自社が獲得したい・必要な人材をイメージして、それぞれの人物に求められる知識やスキル、技術、経験、資格まで具体的に挙げておきましょう。
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ステップ②人材育成に必要な施策やプランを洗い出す
次に、先ほど具体化した求める人物像、またその人物が保有していると考えられる知識やスキル、能力、技術、経験、資格をもとに、人材育成に必要な学習機会等の教育プランや施策を検討していきます。
なお人材育成の手法は、大きく実務を通して日々の業務に必要な知識や経験、技術を身に着けるOJT(On the Job Training)と、通常業務とは別に時間や場所を確保し、社内外で開催される研修等を通して学習機会を提供するOFF-JT(Off the Job Training)の2つに分けられます。自社の人材育成施策を検討する際は、現時点でどのくらいの人的・時間的リソースを割けるのかということも考慮しつつ、OJTとOFF-JTに分けて計画・検討していくとよいでしょう。
ステップ③会社の目標を個別の目標へ落とし込んでいく
組織としての人材育成方針、計画、目標が定まったら、それらを各スタッフの階層や社歴などに合った個別の人材育成目標へと落とし込んでいきます。会社の目標を個別目標へと落とし込む際のポイントとしては、以下が挙げられるでしょう。
- 一人ひとりの社員が主体的に目標へ向け取り組めるように、自身で目標設定させる
- 必ず組織の人材育成目標をベースに個別目標を考えるようにし、会社方針と一致させる
- 私欲で決めるのではなく、達成により周囲の仕事仲間と喜びを分かち合うことができ、かつ期日や数値を明確に設定できることを目標とする
なお日創研の研修では、個別目標を以下のようなプロセスで設定することをおすすめしています。会社方針のもと、社員さんに個別目標を決めてもらう際の参考としてご活用ください。
- 自身の人生、職場、会社をどのようにしていきたいかの「ビジョン」を考える
- 今後半年から3年後までの会社や職場での目標、期日、目的を明確に設定する
- 目標達成のために具体的な行動を促す「業績目標」や「行動目標」を数値定量化する
また目標設定にあたり、自身の現状や課題の把握、適切な数値や期日の設定が難しいと感じた場合は、さまざまなフレームワークを使って情報を整理してみるのもいいかもしれません。
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【人材育成の目標】職種別の具体例
ここからは営業職と事務職を例に、人材育成における個別目標の具体例を紹介していきます。
営業職の個別目標の例 | ・新しく応対のOFF-JT研修を導入し、今後半年以内に、電話でのアポイント平均獲得数を現在の倍にする ・PDCAサイクルと顧客とのコミュニケーション改善により、今後1年以内に、サービスの継続契約率を1.5倍にする ・PDCAサイクル改善や組織力強化により、3年後の営業チーム全体の売上高を1,000万円超にする ・個人としてだけでなく、営業チームとしてPDCAサイクルを回すことを学んでマネジメント能力を向上させ、昇進を目指す ・業務効率化に役立つ技術・ノウハウ系の資格取得や、対応顧客を拡大できるTOEICのスコアアップを目指す |
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事務職の個別目標の例 | ・OJTによる業務フロー改善により、3ヶ月以内に部署でのミス発生率を0%にする ・人材育成方針をもとに一部業務の自動化やシステム化を行い、半年で業務効率化を実現して残業時間を削減、学習のための時間を確保できるようにする ・業務効率化に役立つ技術・ノウハウ系の資格取得に向けて学習をはじめ、1~3年以内に複数種類の取得を目指す ・1年以内に業務全般を把握し、仲間の仕事をフォローできるようになって、職場環境を改善できる人材になる |
なお先述したように、社員の個別目標は階層や役職も考慮して設定しなければなりません。上記に挙げたような職種別に求められる役割・行動特性に加えて、社長・経営幹部・現場の社員の3つの階層別に必要な役割や能力、スキル等も考慮して、個別目標を設定してください。
設定した人材育成目標を達成するためのポイント4つ
ただ方針や目標を設定するだけでは、人材育成を成功させることはできません。そこでここからは、設定した人材育成目標を達成するためのポイントを、4つに絞って紹介していきます。
それぞれの社員さんが個別目標を達成できるように、また企業としての人材育成目標を達成することで組織全体としても成長・発展を続けていけるようにするために大切なことをまとめていますので、しっかり確認しておきましょう。
組織にとっての目標設定の重要性を個人にも周知する
先述した通り、人材育成を成功させるには全社的な取り組みが必要であり、社長や経営幹部、管理職だけでなく、すべての社員に人材育成と目標設定の重要性を理解してもらい、その達成に向けて努力・協力してもらう必要があります。
組織全体としての方針や目標、求める人物像をはっきり示すこと、またそれをもとに主体的に個別目標を設定してもらうことを通して、一人ひとりの社員に組織にとっての人材育成や目標の設定、達成の重要性を理解してもらうようにしましょう。
効果測定や進捗確認がしやすいように、必ず数値化する
目標と現状の乖離がどのくらいあるのか、予定通りに目標を達成できているか、目標の達成によりどのような効果を得られたか等の確認や振り返りを行うには、目標の達成基準がわかりやすく定量的なものとして設定されている必要があります。具体的には、金額や%を用いて明確な数値目標とすること、または客観的に達成できているかをチェックできるような内容に設定しなければなりません。
さらに、「1ヶ月」「半年」「1年」など、目標達成までの期限を具体的な数値にして決めておくことも大切です。目標設定の際には、自社や社員の現在の状態を鑑み、現実的にいつまでに目標の達成が可能なのかを検討した上で数値や期限を定めるようにしてください。
上司と社員で個別面談を行い、定期的に進捗確認を行う
人材育成の目標のうち、社員ごとの個別目標については、本人とともに直属の上司等が進捗を管理し、達成に向けてサポートしていく必要があります。できれば1on1の個別面談を実施し、月単位の目標については毎月、年単位の目標については達成期限の半期または四半期が経過したタイミングを目安にミーティングを行い、進捗確認を行うようにしましょう。
なお進捗に遅れがある場合は、上司が不安要素や困っていること等を聞き、共感を示した上で一緒に解決方法を考えたり、社員本人が自分の力で課題を解決して成長できるように、やり方を改善するためのヒントやアドバイスを与える等のコミュニケーションを取るようにしてください。
目標の管理には「個別目標実現シート」を利用する
日創研では、企業組織が掲げる人材育成目標を個別目標に落とし込み、達成に向けて学習を進めたり、進捗を管理・確認するためのツールとして「目標実現シート(ビジョンシート)」を活用しています。
目標実現シートは、企業全体の人材育成目標を受けて、社員さん自身が以下のような項目について考え、言語化して作成するものです。人材育成において、特に個別目標の設定や進捗管理に不安があるという場合は、ぜひ目標実現シートと個別面談の併用をご検討ください。
- 自身の5~10年後のビジョン
- 人材としての自身の強み
- 5年後以降のビジョン達成に向けた1年以内、または3年後の具体的な目標
- 昨年度の良かったところ
- 昨年度の反省すべきところ
- 今年度、自身の強みをどう強化するか
- 今年度、昨年度の反省点をどう改善するか
- 4~7の内容と会社の方針に基づいた単年度の個人方針
- 単年度の個人方針の中から、自分育成のために特に意識すべき強化ポイントはどれか
- 単年度の個人方針、今年度の改善点や強化点について、毎月振り返りを行う など
個人と企業組織の目標達成に効果的な「可能思考能力」とは
日創研では、ビジネスマナーやコミュニケーションスキルなど職能に直接つながる研修だけでなく、その根幹となる「可能思考能力」を向上させるためのセミナーも多く開催しています。
可能思考能力とは、物事を肯定的に、前向きに解釈する力のことです。もう少し具体的に表現すると、目の前の問題・課題をピンチではなくチャンスと捉え、その解決に向けて前向きに取り組んだり、明確な目標の設定や実現に向けてチームでやり抜く力(やる気)を高めるための基本的な考え方や価値観のことと言えるでしょう。
可能思考能力は、組織全体の人材育成目標や個別目標を設定・達成する際にも、必要になる能力です。日創研では可能思考を学び、身に着けるためのセミナーを複数ご用意しており、問題発見能力と問題解決能力の両方を磨き、目標実現までの過程を体験する実践型セミナーである「SGA目標実現コース」や、同コースの修了生によるプレゼンテーションから目標実現のためのヒントを学べる「目標実現アンバサダー大会」も定期的に開催しております。
自社の人材育成を推進するため目標の設定・実現に役立つ考え方を学んでみたい、体験談からヒントを得たいという場合は、上記のような可能思考セミナーの活用もご検討ください。
人材育成において組織全体・個別の目標設定は非常に重要
自社が目指すべき方向性を見失わないようにするため、また自社に合う施策を選択・実行するために、人材育成目標の設定は不可欠です。また、会社としての人材育成目標を社員の役割や階層別に落とし込んで作る個別目標も、人材育成には欠かせないものと言えるでしょう。
ただ、社員さんによる個別目標の設定が、必ずしもスムーズに進むとは限りません。会社の人材育成目標の落とし込みがうまくいかない、個別目標を設定する本人が自身にとって達成可能な目標のレベルを理解できていないという場合は、まず自身という人材についての認識を改め理解を深めるとともに、組織へのエンゲージメントを高めていく必要があると考えられます。
日創研が提供する可能思考セミナーの一種である「SA自己成長コース」では、「自己への気づき(セルフ・アウェアネス)」をテーマに掲げ、自身が持つ能力や強み、向き合うべき課題、スキルや思考パターンなどについて再認識するとともに、自身の言動が周りに与える影響への気づきも促していきます。
人材育成を通して組織全体を良い方向へ変えていきたい、自身や管理職はもちろん、社員さんたちの今後の可能性を大きく広げていくきっかけを探しているという経営者の方は、ぜひ日創研の「SA自己成長コース」のセミナー受講をご検討の上、お気軽にご相談ください。