2024.09.19

プロが解説!人材育成に使えるフレームワーク9選|活用する際のポイントや注意点も

プロが解説!人材育成に使えるフレームワーク9選|活用する際のポイントや注意点も

フレームワークとは、情報や状況を整理したり、物事や課題について適切に理解するための軸となる考え方や骨組み、枠組みのことです。ビジネスシーンで活用されるフレームワークにはさまざまな種類があり、その一部は、人材育成の計画や課題解決の際にも使われています。

そこで今回は、全国に14,000社以上もの会員企業様を抱え、幅広い中小企業に対し人材育成のサポートをしてきた日創研が、人材育成に使える9つのフレームワークについて解説します。

併せて、企業の人材育成においてフレームワークを活用する上でのポイントと注意点についても紹介していきます。自社に合った人材育成の進め方がわからず、計画の立案や施策の策定に役立つフレームワークを知りたいとお悩みの経営者様は、ぜひ参考にご覧ください。

人材育成におけるフレームワークの重要性や効果は?

人材育成におけるフレームワークの重要性や効果は?

人材育成のためのフレームワークとは、主に自社の現状や課題を客観的に分析・把握したり、自社の状況に合った人材育成計画や目標を決めるための情報整理に使う枠組みのことです。

企業や団体等の組織が人材育成を行う際には、経営理念や経営ビジョン、ミッション等を人事理念に落とし込み、理想の人物像を明確化して、具体的な教育プランや目標を策定する必要があります。しかし、ただ漠然と現場の社員や管理職から話を聞いたり、過去の業績等の数値を振り返るだけでは、客観的な課題の洗い出しや自社の現状把握は難しいかもしれません。

そこで重要になってくるのが、フレームワークという客観的な基準を用いて、現状や人材育成計画にかかわる情報を整理することです。フレームワークの活用は、各従業員の思考力・判断力・知識・技能・資格の有無等の現状把握や、バランスよく成長させていくための学習機会等を具体化する上で、非常に有効な手法だと言えるでしょう。

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人材育成においてフレームワークを活用するメリット

人材育成で使われているフレームワークは、いずれも人材育成の成功パターンをモデル化したものです。そのようなフレームワークを自社の人材育成に活用することのメリットとしては、大きく以下の3点が挙げられるでしょう。

  • 自社の状況をフレームワークに当てはめることで、効率的に人材育成できるようになる
  • 人材育成の方向性がある程度定まるため、実行する施策に一貫性が生まれやすくなる
  • 目標達成までの道のりを確認したり、課題解決策を考える上での参考として役立つ

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人材育成にフレームワークを利用する際のポイントと注意点

フレームワークを自社の人材育成に役立てるには、大きく以下2つのポイントを知っておく必要があります。

人材育成のためのフレームワークだけでも、さまざまな種類があること
目的や育成対象者の階層、社歴、役職により、使い分ける必要があること

詳しくは後述しますが、人材育成に使われるフレームワークには複数の種類があり、それぞれ使用に適したシーンや特徴が異なります。

また組織においては、現場の社員・管理職・経営者といった階層や社歴、役職により、求められる能力や役割が大きく変わってくるものです。人材育成のためのフレームワークは、計画の段階や目的、育成対象者の階層、役職等によって適切に使い分ける必要があると理解しておいてください。

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フレームワークを人材育成に利用する時の注意点は?

一方で、自社の人材育成において効果的にフレームワークを活用するための注意点としては、以下の3つが挙げられます。

  • フレームワークの活用に固執するあまり、人材育成に遅れや支障が出ないよう注意する
  • 「企業組織やお客様、社会に貢献できる人材を育てること」をはじめ、自社にとっての人材育成の目的や目標(ゴール)を見失わないようにする
  • 適切に効果測定や計画の見直しを行うために、中長期的にフレームワークを活用する

ポイントでも述べたように、フレームワークはあくまでも組織の人材育成を成功させるため、また思考や情報を整理するためのツールの一つです。人材育成を進める上で絶対に使わなければならないものではないので、計画や目標を見直したらフレームワークの使用を中止する等、自社の状況や発生課題に合わせて柔軟に、かつ中長期的に活用するよう意識しましょう。

人材育成で使われることが多いフレームワーク4選

人材育成で使われることが多いフレームワーク4選

ここからは、人材育成の現場で使われることが多い4つのフレームワークについて、それぞれの特徴や使うべき場面の具体例にも触れながら紹介していきます。自社の状況や、人材育成計画の段階に合わせて、活用できそうなフレームワークを探してみてください。

カッツモデル(カッツ理論)

カッツモデルとは、リーダーシップやマネジメント力を構成するスキルを以下の3種類に分け、育成対象者の役職や階層、求められる役割ごとに重視する割合を変えることにより、人材育成の効率化を図るフレームワークです。主に管理職、マネージャーの人材育成計画を立てる際に役立ちます。

コンセプチュアルスキル 中長期的・大局的な視点で目標達成、課題解決を目指すための戦略的思考能力のこと。
ヒューマンスキル 部署の部下や上司、同僚、取引先と信頼関係や協力関係を築き、組織の一員として働く上で欠かせない対人関係能力のこと。
テクニカルスキル 専門性の高い技術、知識を用いて実務を遂行する能力、また業務に必要な設備・器具等を操作する能力のこと。

なお日創研では、カッツモデルを応用して社長・経営幹部・現場の社員の階層や行動特性別に習得するべきスキルの種類やバランスを定めること、またそれぞれの社員が自身に求められる役割や能力を自覚し、高いパフォーマンスを発揮する「社長力・管理力・現場力の三位一体の経営」ができる状態を目指して人材育成することを推奨しております。

HPI

HPI(Human Performance Improvement)とは、経営目標をベースとした人材育成計画の立案に役立つフレームワークです。活用に適した場面としては、人材育成計画を立てる初期段階、特に自社の経営理念・経営ビジョンを計画に落とし込むタイミングが挙げられるでしょう。

HPIの大まかなプロセスとしては、まず具体的な期日・数値を盛り込んだ経営目標(〇年後までに売上高△億円達成など)を策定します。そして、その目標達成に必要な人材を獲得するにはどうすれば良いかという観点から育成計画を考えていき、企業側が提供するべき学習機会・内容といった具体的な教育プログラムや、人事制度の見直し等の施策を立案します。

SMARTの法則

SMARTの法則とは、目標設定や目標の質を評価する際に意識すべきとされる以下5つの要素を整理したフレームワークです。従業員のスキルレベルや階層に合った目標設定、またその達成に必要な社員研修の内容等を具体化していく上で役立つフレームワークだとされ、人材育成計画の立案や、計画の見直し・改善を検討している際などに活用するのがおすすめです。

  • Specific(具体性があるか)
  • Measurable(数値として計測可能か)
  • Achievable(現実的に達成可能か)
  • Realistic(業務や目標との関連性はあるか)
  • Time-bound(達成までの期限が設定されているか

カークパトリックモデル

カークパトリックモデルとは、人材育成における教育効果を測定するために使われるフレームワークです。具体的には、以下4つの観点から育成対象者の教育機会への満足度、研修内容の理解度、受講後の行動変化の有無、教育の成果について確認していきます。

  • レベル1:reaction(反応)
  • レベル2:learning(学習)
  • レベル3:behavior(行動)
  • レベル4:result(結果)

なお人材育成の効果を測定する中で、育成対象者の学びや仕事への姿勢、意欲の低さによって課題が発生していると分かった場合は、職能の前に、社員本人の組織への考え方、働き方に関する意識をアップデートさせる必要があると考えられます。

そのような場合は、自己の強みや問題点、思考のパターン、自身の言動が周囲に与える影響などに気づき、仕事へのマインドを変えるための「価値観教育セミナー」を活用することも検討してください。

日創研で活用中!人材育成に役立つフレームワーク5選

日創研で活用中!人材育成に役立つフレームワーク5選

ここからは、さまざまな中小企業の人材育成をお手伝いしてきた日創研が、実際に自社開催の階層別の研修やセミナーで使用している5つのフレームワークについて、それぞれの特徴や解決可能な課題の具体例、活用法を学べるセミナー情報等と一緒に紹介していきます。

一般的に使われることが多いフレームワークと併せて確認し、自社が抱える人材育成上の課題や目的、育成対象者などによって適切に使い分けられるようにしておきましょう。

組織成立の三要素

組織成立の三要素とは、共通の目的・協働の自発性・コミュニケーションの3つの要素のこと。
このフレームワークでは、これら3つの要素を軸に企業組織の現状を分析することにより、人材育成上の課題を明確化し、その背景にある組織不全の是正や組織力の強化を図っていきます。

三要素の詳細

  1. 共通の目的:経営理念、経営ビジョン、経営方針
  2. 協働の自発性:チームワーク、コラボレーション、エンゲージメント
  3. コミュニケーション:朝礼、面談、報告、連絡、相談、確認、ツールや教材の運用

TMI理論(PM理論)

TMI理論とは、組織風土の偏りを是正し、チーム全体が高いパフォーマンスを発揮できるように、自社のT機能・M機能 ・I機能について分析し、整理するためのフレームワークです。日創研では、組織成立の三要素や後述する組織PDCA等と併せて主に経営幹部やマネージャー向けのセミナーで活用・紹介しています。

TMI機能の詳細

  1. T(タスク)機能:目標達成や課題解決のための機能
  2. M(メンテナンス)機能:組織を維持、メンテナンスするための機能
  3. I(インディビジュアル・ビヘイビア)機能:私的欲求からくる組織を破壊する言動

組織における3大マネジメント機能

企業や団体等の組織が成長・発展していくためには、人・仕事・組織の各分野において、健全にマネジメントが行われている必要があります。組織における3大マネジメントとは、これら3つの分野のマネジメント機能について現状を整理し、把握するためのフレームワークです。

3大マネジメント機能の構成要素

人のマネジメント機能を支える要素 ①採用・登用・起用・配属
②指導・育成・教育・訓練・躾
③評価・面接・面談
④仕組み・制度・規則・教材
仕事のマネジメント機能を支える要素 ①効率性の追求(速く・正確・丁寧)
②効果性の追求(必要とさせること・満足度)
③売上・コスト
④コミュニケーション
⑤5W3H思考
組織のマネジメント機能を支える要素 ①チーム・ワーク
②コラボレーション
③エンゲージメント(帰属意識、愛着心)

日創研では、主に上司・管理職向けのセミナーにおいて組織における3大マネジメント機能のフレームワークを活用し、マネジメント不全によって生じる課題の解消や上司の指導能力向上をサポートしています。

GRIT

GRIT(グリット)とは、経営者や経営幹部が自社の目標を達成するために必要な資質である「やり抜く力」「習慣化する力」のこと。具体的には、以下4つの要素から構成される概念のことであり、企業で働く個人のやり抜く力を向上させたい時に活用すべきフレームワークです。

GRITを構成する4つの要素

  1. Guts(ガッツ):チャレンジ
  2. Resilience(レジリエンス):精神的復元力
  3. Initiative(イニシアチブ):自発性と創造性
  4. Tenacity(テナシティ):目標達成をあきらめない執念

組織PDCA

PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(差異・原因・要因分析)・Action(修正)のサイクルを回すことにより業務の質や効率を改善するフレームワークのことです。

ビジネスシーンにおいて非常に有名なフレームワークの一つであり、品質管理や業務管理の他、個人が目標達成を目指すケースでも活用されているため、ご存じの方も多いでしょう。

日創研では、マネジメント能力を「チームや企業等の組織単位でPDCAサイクルを回し、経営数値や目標を達成する能力」と定義しています。そして、組織単位でサイクルを回すための3つの要素を強化すること、また現状における組織の課題や解決策の発見、マネジメント不全を解消することを目的として、組織PDCAのフォーマットやフレームワークを活用しているのです。

組織PDCAを回すための3つの要素

  1. リーダーシップ:目標達成のために計画を立て、チームや組織メンバーを導く能力
  2. 組織力強化スキル:チームや組織のメンバーを一丸にし、結束力を強化する能力
  3. 人材育成:組織として成果を出し続けるために、長期間にわたって人材育成する能力

組織PDCAと3つの要素について実践的に学ぶ「マネジメント養成6か月コース」参加者の声

人材育成の際は自社に合ったフレームワークを活用しよう

人材育成の際は自社に合ったフレームワークを活用しよう

現状把握や課題、またその解決策を発見するための情報整理に役立つフレームワークは、目的や育成対象者の階層別に使い分ければ、企業における人材育成の効率化に役立つでしょう。

ただ、具体的な計画の立案や人材育成を担当する立場である経営者や経営幹部、管理職が自社にとって最適なフレームワークを選定できなかったり、チームとして成果を上げることに苦手意識があるという場合は、人材育成を行うノウハウが身についていないのかもしれません。

そのような場合は、リーダーシップ・組織力強化・人材育成の3つについて学ぶとともに、組織としてPDCAサイクルを回して数値目標を達成すること、またそのための課題解決について実践的に学べる日創研の「マネジメント養成6か月コース」のセミナー受講、活用がおすすめです。

自社の人材育成において育成担当者の指導能力に課題を感じている、経営幹部のスキルアップを通して各部門や組織全体のパフォーマンス、人材の質を高めたいとお考えの経営者様は、ぜひ日創研の「マネジメント養成6か月コース」の受講をご検討の上、お気軽にご相談ください。

マネジメント養成6か月コース

環境変化に合わせた仕事の改善・改革や、結果をつくる人材の育成方法など、マネジメントに必要なスキルや知識を身につけることができます

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