2023.04.26

インフレに負けない売上創出のカギとは?差別化と訴求ポイントの洗い出しを紹介

昨今のインフレによって、ユーザーの経済状態は悪くなる一方です。商品を購入する時のユーザーの目は、これまで以上に厳しくなるでしょう。こうした厳しい状況下では、売上を伸ばす企業と低迷へ向かう企業の二極化が進みます。売上の明暗を分けるのは、差別化と訴求力といっても過言ではありません。
本記事では、商品やサービスを販売する際の差別化について詳細を説明しています。差別化戦略や訴求力について知りたいと思う方は、ぜひ記事内容をご確認ください。

マーケティングに欠かせない差別化戦略とは


マーケティングにおける差別化とは、自社と他社の商品やサービスの販売戦略に明確な違いを生み出し、ユーザーへ向けてわかりやすく提示することです。
わかりやすく差別化ができ、かつ訴求ポイントがユーザーへうまく伝わると売上げアップに繋がります。市場の優劣は必ずしも価格で決まるわけではありません。まずは販売戦略の全体像を把握しましょう。

差別化をもたらす競争戦略とは

差別化戦略は、アメリカの経営学者のマイケル・ポーターが提唱した3つの競争戦略のうちの一つです。ポーターによって提唱されたコストリーダーシップ戦略、集中戦略、差別化戦略をそれぞれ確認してみましょう。

コストリーダーシップ戦略

サービスや商品の価格を他社よりも安くする戦略です。販売価格を下げる代わりに、生産過程の効率化、簡素化によるコスト削減が必要です。大規模生産や人件費の削減など、コストパフォーマンスを実現するにはいくつかの大きな障壁があります。
ある程度の資本がないと、取りづらい戦略です。

集中戦略

特定の市場、サービス・商品に経営資源を集中させて費用対効果を高める戦略です。特定のポイントで、一点突破を目指す戦略をとります。しかし、現代では選択と集中が経営の基本という考え方が一般的になってるため、他社に先駆けた戦略になりづらい可能性があります。

差別化戦略

今回の記事の大きなテーマとなっている差別化戦略は、自社の商品やサービスが他社のものと明確な違いがあり、価値を見いだせると消費者に認知されるよう、差別化を図ることです。さまざまな商品が市場に溢れている現代では、消費者は多くの選択肢から自分に合うものを見つけ出さなくてはいけません。多くの選択肢の中からまずは、見つけ出してもらうことが大切です。
明確な違いや、決定的な特徴がない商品やサービスは、埋もれてしまい、選ばれる可能性は低いままでしょう。「決定回避の法則」で指摘されているように、消費者は一見して違いが分からないものについては判断に迷ってしまい、結果的に購買活動をやめてしまいます。差別化戦略は、ユーザーにとってどのような価値やメリットを提供できるのか、真剣に考え抜くことから始まります。

目的は顧客満足度の獲得

差別化や販売戦略に意識が集中すると、競合他社との違いやアピールできる強みに注目してしまいがちです。
差別化戦略の本当の目的は、顧客満足ということを忘れてはいけません。消費者への価値の提供を一番に考え、どのような価値を提供できるのかという視点を常に持っておきたいところです。

差別化を目指す4つのポイント

差別化を進めやすいポイントは4つです。4つの差別化軸のうち、2つ以上のポイントで強みを発揮できると、市場での大きなシェアを獲得することも可能です。

ブランディング

ブランドにまつわるイメージやカラーが確立されていると、独自の価格戦略を確立することができます。
ブランドイメージでの差別化で重要なポイントは以下のとおりです。

  • 他のブランドとは異なる世界観
  • 独自のサイドストーリーでイメージをより強固にする
  • 広告のデザインや内容、ターゲットに合わせた媒体選び
  • 広告から商品に至るまで、デザインやカラーに統一感を持たせる
  • 他社とかぶらないポジショニングを確保する

ブランドイメージを築き上げるには、継続した発信が重要です。他のブランドとは違う付加価値を提供し続けることで、よりブランドイメージやカラーは強固なものとなります。

商品力

他社とは違う優れた商品、特異性のある商品も大きな差別化のポイントです。商品で差別化するための方法は以下のとおりです。

  • 品質の向上に努めて、よりよい商品を作りだす
  • 他社が真似できないような機能を開発し、製品化する
  • 今までにない斬新なデザイン
  • 付帯サービスの充実
  • 見落とされがちな市場にない新しい商品のリリース

今までにない新しい商品を市場へ送り出すことで、多少価格が高くとも一定のシェアを獲得することができ、価格競争に巻き込まれる可能性は低くなります。
機能面はすぐに真似され、広く共有されてしまう可能性が高いため、独創性やデザインなどで優位に立ち、早々に商標登録などによって権利を守る方針が望ましいです。

顧客サービス

業界の中でも特異性のある魅力的な顧客サービスによって、差別化を推進する方法です。顧客サービスによる差別化のポイントは以下のとおりです。

  • 自社の強みやこだわりをユーザーと共有する
  • 他社にはない付加価値やサービスの設計
  • サービスの質を向上去せるための仕組みつくり
  • スタッフの成長を促す環境つくり

顧客への徹底したサービスで差別化を図っている有名な企業は、ディズニーランドやディズニーシーを運営するオリエンタルランドです。数あるテーマパークの中でも、ディズニーランドやディズニーシーは別格と見ている人も多いのではないでしょうか。
オリエンタルランドは全てのゲストをVIPとしておもてなしするポリシーの元に、ホスピタリティの高い顧客サービスを提供しています。高い付加価値の商品化は、他社が真似しづらいため、差別化がしやすく優位性も高まります。

タッチポイントの多様性

流通チャネルにて競合他社との違いを出す方法です。例えば、化粧品の会社などは細かい代理店網を生かした住宅街での販路、デパートでの実演販売、インターネットの通販サイトなど、ユーザーとのタッチポイントを多く持っています。インターネットを使った販売が注目されて久しい昨今ですが、実店舗とインターネットの販路を組み合わせたマルチチャネルこそが、理想とする販売形態といえるでしょう。
顧客との接点は多く持っておいたほうが、販売戦略がとりやすいメリットもあります。

差別化戦略の具体的な進め方

差別化戦略の大枠を理解したところで、成功させるための具体的な進め方について、以下に紹介します。

消費者のニーズと業界のトレンドを調べる

差別化戦略のみならず、顧客のニーズを分析し、把握することはマーケティングの基本です。どんなに良い商品を作っても顧客のニーズを満たしていなければ、その商品が売れることはないでしょう。
まずは、業界内で顧客のニーズがあるポイントを選び出し、どのように差別化できるか、考えます。

よりピンポイントなニーズに応える場合、特注品の生産が有効です。顧客が本当に必要としているニーズをヒアリングなどで詳しく洗い出し、要望を叶える製品を納品します。特注品を納品するルートは、他社の真似できる範囲ではないため、差別化を図るのは容易です。汎用品であっても、顧客目線に基づいた製品制作は、ブランディングの一助となるでしょう。

競合他社のリサーチと自社の強みの再確認

同じ業界内でトップシェアを確保している企業を中心に、競合調査を行います。競合企業のシェアが大きすぎる場合、同じ領域で戦っても勝ち目がありません。競合他社の強みや弱みを分析するとともに、自社が戦える領域を見極めることも重要です。
例えば、コンビニ業界ではセブンイレブンが揺るぎない存在感を示し、業界シェア1位を維持し続けています。セブンイレブンが特異とするPBの品質は、他のコンビニを圧倒しているといっても差し支えありません。
ファミリーマートは品質面での真っ向勝負は避けつつ、地域住民との密着に活路を見出し、地域一番店を目指す方針で差別化を図っています。

自社の強みの洗い出し

業界の周辺状況と競合他社の調査が終わったら、自社の強みを再確認します。自社が持つ強みを徹底的に伸ばしつつ、顧客への継続的アピールを行うことで、唯一無二の差別化を実現します。
強みに特異性を持たせるには、継続的発信が必要です。例えば、有名な今治タオルは、安心・安全・高品質を突き詰め、こだわり抜いた結果を継続して発信することで、高級タオルの今治タオルというブランディングに成功しました。
一度確立されたブランディングは、大きな不祥事でもなければそう簡単には崩れません。
強みから特異性までの引き上げができれば、差別化戦略はひとまず成功したと言えるでしょう。

差別化を進める際に活用したいフレームワーク

市場分析や競合分析など、差別化戦略に役立つフレームワークを2つ紹介します。

自社をとりまく状況を把握する3C分析

3C分析は、マーケティングの世界ではおなじみのフレームワークです。自社を取り巻く業界の様子をまとめる時に活用します。ユーザーや市場を表す「Customer」、競合他社を表す「Competitor」、自社を表す「Company」の頭文字をとって3Cと呼ばれています。
前述の具体的な進め方を、そのままフレームワークに落とし込んだ内容です。客観的な視点が得られるため、差別化を図る際の3C分析は抑えておきたいところです。

優位性を分析するVRIO分析

VRIO分析は、相対的に見た自社の強みを深堀りするためのフレームワークです。「Value(経済的価値)」「Rarity(希少性)」「Inimitability(模倣困難性)」「Organization(組織)」の頭文字をとってVRIOと呼ばれています。人や、モノ、資金、情報、時間、知的財産など、自社がもつ経営資源に着目し、それぞれがどのような競争優位性を持っているのか、VRIOの4つに分けて分析します。

Value:「価値」
顧客への価値創出、または利益創出につながる資産をどの程度もっているのか、という観点で分析を進めます。商品やサービスの価格ではなく、本質的な価値を指しています。

Rarity:「希少性」
経営資源が市場において希少性が高いものか、という点で判断されます。人材の市場価値で例えると、立派な資格を持っている人でも、同じような資格を持っている人が多くいると、希少性は低くなります。
資格はなくとも、特定分野で需要のある高いスキルを発揮できる人は、希少性の高い人材となり、高い報酬を獲得できる可能性が高まります。商品やサービスにおいて希少性は、先鋭性と言っても良いでしょう。

Inimitability:「模倣困難性」
競合他社が簡単に真似できるか、という視点で判断します。独自のビジネスモデル、自社固有の設備など、他社が簡単に真似できないものを持っていると高く評価し、特になにも持っていない、簡単に真似されてしまいそうなものは低く評価します。

Organization:「組織」
前述のVRIで評価した経営資源を組織全体で有効活用できているか、という判断軸で評価します。
持っている商品やサービスとその優位性をうまく活用、最大化し、市場の中で存在感を示すための組織運営ができるか、という点が評価ポイントです。

差別化の軸を考えるときのポイント

何もない白紙の状態から差別化ポイントを考え出すのは一苦労ですが、軸となるものがあれば、答えを導き出しやすくなります。
差別化を考える時の指針となる軸を以下3点、紹介します。

手軽軸

手軽軸は競合他社よりも、商品を早く、安く、かつ便利に提供できるか?という観点を軸とする方法です。安さ、速さ、手軽さは多くの消費者が優先する判断軸です。手軽軸でシェアを獲得できると、大きな利益を得られる可能性が高まります。
手軽軸は高い利益が狙える一方で、多くの競合の参入が予想されるため、本格的に戦う場合は、熾烈な価格競争に耐えられる程度の資本が必要です。

商品軸

商品軸は、商品そのものの質を軸とする考え方です。他社より高品質であるか、目新しさや独自性があるか、という観点で差別化を目指します。商品軸での差別化に成功すると、商品に価値を見出した消費者が購入するため、熾烈な価格競争に巻き込まれる可能性は低くなります。
価格競争に陥らない代わりに、競合他社は新しい機能やアイデアをあっという間に取り込み、市場で共有してしまうため、機能やアイデアのいたちごっこに陥る可能性を秘めています。継続的に新機能やアイデアを出し続ける必要があるため。技術開発へ充てるコストの確保が必要です。

密着軸

密着軸は、それぞれの消費者へフィットさせるために、柔軟性やカスタマイズ性を重視する観点で差別化を図ります。最近のSNSを使ったマーケティングの主流は密着軸を基本としています。多くの人に訴求するのではなく、ピンポイントな人に向けた訴求を行い、ファンを獲得する方法です。
手間やコストがかかる方法ですが、個別化された体験を好むユーザーは多いため、うまくアピールできると一定の効果が得られます。

訴求ポイントをうまく作るための考え方

ユーザーは技術やスペックそのものを購入するのではなく、自分が抱えている課題を解決する、要望や希望を実現するために対価を支払います。商品やサービスは望みを叶えるためのツールに過ぎません。したがって、商品やサービスが持つ良さをユーザーニーズ本位のコンセプトへ落とし込む必要があります。自社の商品やサービスが、顧客のもつ課題にどうリーチできるのか、真剣に考えましょう。ユーザー視点が欠落したまま、サイト制作やマーケティングを始めてしまうと、軸が定まらず、訴求力を発揮することはできません。
訴求ポイントの整理には、思い込みをやめて、ユーザー視点を徹底し、商品本来の良さ、魅力を徹底的に掘り下げる必要があります。その上で、これまで述べてきたマーケティングのフレームワークなどを活用し、訴求ポイントを絞り込んでいきます。

まとめ

給与のベースは据え置きのまま進む物価高騰の中、ユーザーの購買意欲は低下する一方です。本質的な価値がない商品やサービスがユーザーから選ばれる可能性は低いでしょう。また、価値があるものでも、ユーザーへ的確に訴求できなければ、良さに気づいてもらうことができません。
差別化と訴求は、今後のビジネスにおいて、とても重要なものとなるでしょう。どの場所で戦っていくのか、明確にして届けるべき人へ的確に訴求できるよう、差別化戦略を徹底しておきましょう。

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